代表的な循環器疾患について

虚血性心疾患

急性冠症候群(不安定狭心症、急性心筋梗塞)に代表される虚血性心疾患への冠動脈インターベンション(PCI)から冠危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症)のコントロール、禁煙指導および栄養指導にわたる幅広い診療を行っています。
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)については、学会活動を通じて積極的に最先端の手技を導入し加療を行っています。通常の虚血性心疾患(狭心症、陳旧性心筋梗塞)に対する心臓カテーテル検査ならびに経皮的冠動脈インターベンションについては、クリニカルパスを用いた3日間での入院加療を実施しています。また、疾患の程度に応じて患者さまのニーズに沿う形で2日間での入院加療も行っています。
当院は日本心血管カテーテル治療学会の研修関連施設に認定されており、同学会の専門医・指導医のもとに年間200~300件に上る冠動脈へのカテーテル治療を行っています。

心臓カテーテル検査(CAG)について

足の付け根の動脈(大腿動脈)や腕(上腕動脈)や手首の動脈(橈骨動脈)などの血管から細い管(カテーテル)を心臓へ血液を供給する冠動脈に挿入し、カテーテルを通じて造影剤を注入し多方向から撮影を行い冠動脈の形態評価を行います。この検査により冠動脈における狭窄や閉塞病変の有無、それら病変の部位や狭窄の程度を正確に把握することが可能となり、心筋梗塞や狭心症の診断が可能となります。
また、狭窄の程度が中等度であり冠動脈造影所見のみでは治療の必要性を判断できない場合には、FFR検査を追加し治療の必要性の有無を正確に判断します。

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)について

足の付け根の動脈(大腿動脈)や腕(上腕動脈)や手首の動脈(橈骨動脈)などの血管からカテーテルを治療対象の冠動脈へ誘導し、冠動脈にガイドワイヤーを呼ばれる細い管を通過させ、血管内超音波検査(IVUS;Intra vascular ultra sound)で病変の観察行った後に、病変部をカテーテル先端に取り付けたバルーン(風船)で内側より拡張(POBA;Plain old balloon angioplasty)を行います。バルーンの中にも種類があり、通常のバルーンでは拡張不良が予測される石灰化病変に対しては、ブレード(刃)のついた特別なバルーン(スコアリングバルーン)を使用し拡張を行います。ただPOBAにより予想できない血管へのダメージ(解離)を発症し血流障害を生じる場合や、POBAだけでは血管のリコイル(血管が拡張前のもとの状態に戻ろうとする動き)により急性閉塞や再狭窄を繰り返す場合もあり、そういった場合にはステントと呼ばれる金属の筒を血管の内側より拡張し留置(冠動脈ステント留置術)し、冠動脈の血液の流れを確保します。また、後述するデバルキングデバイスと呼ばれるDCA(Directional coronary ath

erectomy)の使用による十分なプラークの切除後や、Rotablatorダイヤモンドバックによる石灰病変の十分なAblationの後に再狭窄予防目的にバルーンに薬剤を塗布した薬剤コーティングバルーン(DCB;Drug coating balloon)での拡張を追加し手技を完結できる場合もあります。以上の様な手技全般をPCI(Percutaneous coronary intervention)という総称で呼んでいます。

用語ならびに手技の説明

FFR(冠血流予備量比)検査

通常は心臓カテーテル検査に続いて行います。冠動脈内に狭窄病変があるとき、狭窄病変によってどのくらい血流が阻害されているかを推測する指標です。冠動脈内にプレッシャーワイヤーという装置を挿入し、冠動脈拡張薬を注入し最大充血が得られた状態でFFRを測定します。通常5分程度で検査は終了します。

IVUS(血管内超音波検査)

血管内超音波検査(IVUS)は超音波を用いた検査です。直径1mm程度の超音波装置が先端に搭載されたカテーテルを血管内に挿入して行います。血管内の断面像を超音波によりリアルタイムで観察することで、血管内の状態を把握しPCIの手技をより安全に確実にします。

POBAならびにステント留置術

POBAとは、病変部をカテーテル先端に取り付けたバルーン(風船)で内側より拡張する手技のことです。
ステント留置術とは、ステントと呼ばれる金属製の網状の筒を留置して狭窄部の血流を確保する手技のことです。再狭窄(冠動脈の治療した部位が再び細くなること)の割合を減らすため、薬物溶出性ステント(DES;Drug eluting stent)と呼ばれる再狭窄を予防する薬剤が塗布されていて、留置後に薬剤が溶出するステントを主に使用します。

POBAならびにステント留置術
POBAならびにステント留置術
POBAならびにステント留置術
POBAならびにステント留置術
POBAならびにステント留置術
DCA(方向性冠動脈粥腫切除術)

カテーテルの先端の小窓についた小型のカッターをプラーク(粥腫)に押し付け、切除し体外へ取り出す手技です。

DCA(方向性冠動脈粥腫切除術)
Rotablator(ロータブレーター)

ロータブレーター(Rotablator)とは高速回転冠動脈アテレクトミー(Rotational Coronary Atherectomy)の略で、冠動脈がプラークと呼ばれるコレステロール成分の長年の蓄積により高度石灰化病変となり狭窄に至った場合には、通常のバルーンやスコアリングバルーンでは拡張が極めて困難となります。そのような高度石灰化病変に対して病巣を削るドリルのような治療器具となります。ロータブレーターの先端には、20~30ミクロンのダイヤモンド粒子が埋め込まれており、この固いBurr(バー)が1分間に17~20万回転という高速で冠動脈の中で回転し石灰化病変を切削していきます。

治療効果は絶大であり、令和2年にロータブレーター使用に対する施設基準の改定後、日本心血管インターベンション学会研修関連施設である当院では、ロータブレーターに習熟した医師(日本心血管インターベンション学会専門医・指導医)がいることの条件を満たし使用が可能となっております。

Rotablator(ロータブレーター)
Rotablator(ロータブレーター)
ダイヤモンドバック(OAS; Coronary Orbital Atherectomy システム)

ダイヤモンドバックとは、従来からのロータブレーターに加えて、最近本邦にて使用可能となった高度石灰化病変に対する治療器具です。先端にダイヤモンドで構成されたクラウンと呼ばれる部分があり、このクラウンが軌道回転して石灰化病変を大きく削ることができます。ロータブレーターはバーサイズと同じ大きさで前方向にしか削ることができませんが、ダイヤモンドバックは軌道回転することでクラウンサイズよりも大きく削ることができ、また前方向だけでなく後方向に引いても削ることができるのが特徴です。病変形態に応じてロータブレーターとダイヤモンドバックを使い分けて、あるいは併用することでより安全な石灰化病変の切削が可能となります。

ダイヤモンドバック ダイヤモンドバック
ダイヤモンドバック
DCB(薬剤コーティングバルーン)

再狭窄を抑制する効果のある薬剤をコーテングしたバルーンです。
ステント内再狭窄やデバルキングデバイス使用後のステントレスの治療や、ステントの留置ができない小血管へのPCIに使用します。

末梢動脈疾患

病因と症状

末梢動脈疾患とは、主に下肢動脈が狭窄、閉塞することにより発症する疾患です。症状として、歩行時の下肢の冷感、しびれ、疼痛などが出現します。放置しておくと、下肢が壊死に陥り、最悪の場合には下肢切断に至ることもあります。足に潰瘍、壊死が認めた場合の5年生存率は約50%程度とされ、早期の胃がんより悪いとの報告もあります。下肢末梢動脈疾患のなかでは、下肢動脈の狭窄による血流障害(虚血)による段階を下肢閉塞性動脈硬化症(ASO;Arterio-Sclerosis Obliterans)と呼び、下肢動脈の閉塞等、血流障害がより悪化した場合を重症下肢虚血(CLI;Critical limb ischemia)と呼びます。その他、当院では腎血管の狭窄に起因する腎血管性高血圧や、上肢への血流障害による一過性の失神発作の原因である鎖骨下動脈狭窄症に対しても、カテーテルインターベンションによる加療を実施しており、動脈硬化による末梢動脈疾患に対して薬物療法を加えた包括的血管マネージメントを行っています。

診断と検査

外来受診時に5分程度で施行可能な「ABI検査」により両腕・両足の血圧を測定することで、簡単に下肢動脈疾患があるかどうかを判断することができます。この検査は同時に脈波を測定することも可能であり、ご自身の血管年齢を推測することも可能です。下肢動脈疾患が疑わしい場合には、診断を確定するために造影剤を用いた「下肢血管造影CT検査」や造影剤を使用しない「MRI検査」を追加します。通常、「MRI検査」では動脈硬化の指標となる石灰化を評価することが困難であり、「下肢血管造影CT検査」がアレルギー疾患、喘息の既往や腎機能も問題等で施行できない場合に行います。これらの検査により、下肢血管における狭窄や閉塞病変の部位や重症度を正確に評価することが可能となります。

治療

治療方法としては、運動療法、血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)を内服して症状を改善させる薬物療法、冠動脈疾患と同様にカテーテルによる治療(EVT;Endovascular treatment)、人工血管や患者さま自身の静脈をグラフトとして使用するバイパス手術(外科手術)などがあります。当院では運動療法、薬物療法ならびにEVTを組み合わせて治療を行っています。患者さまの症状の程度、病変の部位と重症度、治療に伴う危険性を考慮して外科的手術を考慮する場合もありますが、今のところは全症例がEVTでの治療で完結可能となっています。治療に際して、下肢動脈疾患患者さんのおよそ半分が冠動脈疾患を合併していることが報告されており、冠動脈造影検査も行い心疾患の合併の有無も同時に評価を行っています。EVTについては、冠動脈治療と同様にステント(骨盤腔内の血管病変に使用)、薬剤溶出性ステント(主に大腿動脈病変に使用)、薬剤コーティングバルーン(主に大腿動脈病変に使用)、バルーン(主に膝下動脈以下の細い血管に対して使用)等を使用し治療を行っています。当院では年間30~70件のEVTを行っています。

心不全

急性期には、必要に応じてスワンガンツカテーテルを挿入し心血行動態をモニタリングしつつ加療を行っています。また重症心不全に対しては、薬物療法に加えて、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、持続的血液濾過透析(CHDF)等も積極的に導入し心不全管理を行っています。

診療実績

診療実績

不整脈について

典型的な動悸や体調不良を主訴とする有症候性の不整脈から、健康診断で指摘されるような無症候性の不整脈まで診療範囲は及びます。不整脈の分類は、あるべき脈が減っている“徐脈性不整脈”と、余計な脈が増えている“頻脈性不整脈”に大別されます。治療適応の原則は有症状の不整脈は治療を検討し、無症状の不整脈に関しては生命の危機があるのならば治療を検討することとなります。一見無症状でも隠れて心臓に負担をかけている場合があり、その場合は有症状に準じた考え方に切り替えるときもあります。

徐脈性不整脈については原因の検索を行い、必要に応じた薬剤調整、必要ならばペースメーカーの植え込みを実施しています。ペースメーカー植え込みについては、従来型の経静脈リードを用いた皮下植え込みは当然のこと、リードレスペースメーカも症例に応じ対応します。

頻脈性不整脈についても原因の検索を行い、必要な薬剤調整、そして必要ならばカテーテルアブレーションを実施しております。カテーテルとは管、アブレーションとは焼灼という意味です。不要な脈を作っている電気的興奮をなくすように、血管経由で心臓を切り開くことなく心臓を焼灼します。心臓の収縮に問題がないのに不整脈で悩まされる患者様は多くいらっしゃいますが、そのような患者様はカテーテルアブレーションで根治が得られる可能性が十分にあります。特に心房細動については、高齢化社会を反映しカテーテルアブレーションのニーズが高い疾患です。長期経過の心房細動になると治療成績が不良となってくるため、早期の治療がお勧めです。当院ではクリニカルパスを用いた入院加療を行っております。麻酔方法については疾患に応じて調整しておりますが、心房細動については焼灼中の苦痛除去に深鎮静で治療を行っております。

診療実績

アブレーション総数47例(心房細動36例、その他発作性上室性頻拍や心室性期外収縮など11例)
新規ペースメーカー植込み術12例
2021年実績・・・
アブレーション総数73例(心房細動49例、その他発作性上室性頻拍や心室性期外収縮など24例)
※心臓電気生理学的検査のみ2例
新規ペースメーカー植込み術17例

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