

9月29日、あいにくの雨模様となりましたが、当院認知症看護認定看護師の井上によるオレンジカフェ「認知症がよくわかるcafé2」が開催されました。
前回(2025年7月8日)に引き続き、認知症についてしっかりと勉強できる機会にたくさんの方に参加していただけました。
前回の開催記事はこちら
https://www.eijuhp.com/news/area/20250708.html
認知症とは、さまざまな原因によって脳に変化(ダメージ)が起こり、認知機能が持続的に低下して、それまでできていたことができなくなり、生活に支障をきたした状態のことをいいます。
2025年には、認知症の予備軍とされる軽度認知障害(MCI)を含めると、高齢者の約3人に1人が該当すると推計されています。認知症は誰がなってもおかしくない、とても身近な病気です。「認知症だから」と特別視するのではなく、自然に支え合える社会へとアップデートしていく必要があります。
また、「認知症予防」とは「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を穏やかにする」という意味であることも紹介されました。
これからの高齢社会に向けて、介護や老年期の捉え方そのものも変わってきています。
当日講師を務めた認知症看護認定看護師の井上が考える、介護観の従来の捉え方と新しい捉え方の違いが紹介されました。

認知症についてのわかりやすい説明の後、実際に認知機能の低下が見え始めた人との関わり方についての紹介がありました。
まずは、認知症の人がどのような世界を見て、どのように感じているのかを想像してみることから始まります。
認知症の主人公の視点から描かれた映画『ファーザー』も紹介されました。
「うまく理解できない」「うまく表現できない」ことを理解して寄り添うだけでなく、その奥にある「理由」や「意思」を尊重した関わり方をすることが大切です。「どうすればやめてくれるだろう」ではなく、「なぜそうしたんだろう」と考えてみましょう。行動の背景には、必ず理由があります。
姿勢
・本人の立場になって理由を考える
・本人に理由をたずねる
・その人の発する言葉・声・表情・しぐさ・行動から「望んでいること」「困っていること」を読み取る
話し方
・シンプル:短く、わかりやすく伝える
・内容は一つ:一度にたくさん伝えず、ひとつずつ
・ゆっくり:返事や行動を急がせず、待つ
・具体的:具体的に伝える「ちゃんとして」→「椅子に座りましょう」
接し方
・笑顔で
・目を見て、触れる
・相手を尊重する心(親しき仲にも礼儀あり)
・「どうしたいですか?」「今困っていることがありますか?」など
行動から、本人の困りごとを探る
・何度も同じことを聞く→記憶を保てないのに気になっている、困っているのかな
・すぐに大声を出す→状況を認識できなくて混乱しているのかも、説明が十分ではなかったのかな
・また急に歩き始めた→不安が強く出ていて、じっとしていられないのかな、どこに違和感を感じているんだろう
また、「認知機能の低下」といっても、すべての機能が低下しているわけではなく、ばらつきがあります。
得意・不得意を理解し、不得意なところはサポートしながら、できることはご本人の力を発揮できるように促していきましょう。
「心の欲求」を満たすための5つのポイント
認知機能の低下がある人の「欲求(ニーズ)」に寄りそう関わりが大切です。
5つの「心の欲求」と、確認したいポイント、関わり方の例が紹介されました。

関わりの中で、相手が今どのような状態にあるかを知る目安として、次のようなサインも紹介されました。
良くない状態のサインが見られたときは、関わり方や環境を見直すきっかけにしてみましょう。

「脳の老化」は20歳から始まっているといわれています。ヒトの脳は20歳くらいをピークに萎縮しはじめ、その領域の神経細胞が減ることで、記憶や言葉の理解などの認知機能の低下につながると考えられています。
・加齢:誰にでも起こる自然な現象で、50代頃から萎縮が本格化します。
・生活習慣病:高血圧や糖尿病などで血管が傷つき、脳の血流が悪化します。
・脳を使わない環境:日常のルーティン作業ばかりで新しい刺激がないと、神経細胞のネットワークが弱まります。
さらに以下のような習慣で「脳の老化」が進んでしまいます。
・喫煙:動脈硬化を促進し、脳の萎縮を進めます。
・飲酒:アルコールの代謝でできる有害な物質が脳に影響します。お酒が弱い人は特に注意が必要です。
・肥満:動脈硬化を促進し、脳に酸素や栄養が届きにくくなります。
・うつ:記憶に関わる「海馬」の萎縮が見られるという報告があります。
息が少し弾むくらいの中強度の有酸素運動を、30分から1時間程度・週に2〜3回行うことで、脳の成長を促す成分が増え、脳の神経新生が促されて海馬の体積が増えるという報告があります。早歩きや階段上りなど、ジョギングほどの強度がない運動でも効果が期待できるといわれています。
好きな趣味に没頭したり、知的好奇心を持ったりすることが、認知機能の向上につながります。スポーツ観戦より自分でプレーする、音楽鑑賞より楽器を演奏するなど、受け身よりも能動的な趣味がおすすめです。
家族以外の人と会話をすることは、相手の表情を読み取り、感情や言葉を理解し、共感するなど、社会性に関わる脳のさまざまな領域を駆使することにつながります。メールなどの文字よりも、対面での会話のほうがより効果的です。
特定の何かを食べるよりも、多品目をバランスよく食べることが大切です。腸と脳は互いに影響しあう(腸脳相関)ため、偏った食事は認知機能にも影響するといわれています。魚や野菜、豆類、海藻類を取り入れた和食がおすすめです。また、脳にうれしい油として「アマニ油」も紹介されました。オメガ3系脂肪酸を含み、脳の炎症を抑えて老化から守る作用が期待されています。火を入れずにそのまま小さじ1杯を、納豆やお味噌汁などにかけて取り入れてみましょう。
睡眠は、脳内の老廃物(アルツハイマー型認知症の原因物質とされるアミロイドβ)を洗い流す、脳にとって重要な働きです。睡眠中には記憶の定着も行われます。6時間以上の睡眠時間をしっかり確保しましょう。
人生や生活に対する満足感や幸福感などのポジティブな感情が、認知症のリスクを下げるという研究結果が報告されています。ささやかなことでもいいので、日々の生活の中で「幸せだな」「楽しいな」と思えることを意識してみましょう。
70歳、80歳からでも手遅れということはありません。脳には「可塑性(かそせい)」(神経細胞のネットワークが変化して適応する力)があり、いくつになっても新しい能力を獲得できるポテンシャルがあります。運動や趣味、規則正しい食生活や睡眠など、まずはできることから一つずつ実践してみましょう。
認知症は、「その人らしさ」を失う病気ではありません。本人の困りごとを理解し、その人の力が発揮できるように支えていくこと。そして、年齢を重ねてもいきいきと過ごせるよう、今日からできることを始めていくこと。今回のカフェでは、その両方の大切さをあらためて学ぶことができました。
会の終わりには、参加者の方から「2ヶ月ほど前に、自分には幸福感が足りないなと思ってから、その日1日にあった良かったことを3つ書き出す習慣を始めた」というお声をいただきました。ポジティブなことを書き出し、後で見返すことで、うれしい気持ちや楽しい気持ちを呼び起こすことができる、とても素敵なアイデアです。手軽に取り入れられる方法なので、気になる方はぜひ始めてみてください。
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