血液内科 主任部長 萩原 政夫医師

血液内科 主任部長 萩原 政夫医師

萩原 政夫医師

まだ治療方法が少ない血液内科で患者に向き合う医師との出会い
血液内科の中で抗がん剤治療を行うことができる達成感に魅力を感じる

医師になり専攻を選ぶ時、自分自身を内観。消去法で考えていく中で、外科、精神科、小児科にはしっくりきませんでした。そこで残ったのが内科ということで入局しました。最初のローテーションでまわったのが血液内科でした。当時の血液内科は、今のように抗がん剤治療が進歩していなかったにもかかわらず、多くの重症患者の治療に頑張っている先生方の姿を見て、非常に感銘を受けました。多くの内科では、場面場面で外科の助けが必要とされる中、血液内科はその科の中で治療を完結することができる。しかも、患者さんを抗がん剤で治すことができるという達成感は他の診療科では味わうことができないものがあると強く感じ、血液内科を選択し志望しました。そして、その後も迷うことなく30年以上、この血液内科の分野に携わっています。
ただ、その30年以上ずっと臨床だけに携わっていたのではなく、10年間程は研究の分野にも関わりました。血液内科の分野にはたくさんの題材もあり、様々な治療の進歩に繋がっています。その経験も生かしながらの臨床研究もライフワークとして取り組んでおります。

研究分野に携わった時間、それは遠回りではなく
「研究をして良かった」を感じることができる

常日頃、研究をして良かったと思うことができる場面もあります。臨床というのは、漫然としていては駄目で、自分の経験をみんなに披露、共有することが大事です。学会発表や論文を書いていくなどのトレーニングも経験することができましたし、やはり臨床研究の中で患者さんからエビデンスを導き出す意識も習慣化できたため遠回りとしたという感覚はありませんね。その経験をしたからこそ、若い先生達には臨床ばかりではなく、是非研究に挑戦していくことをお勧めしますね。
私が注力してきた分野は、腫瘍免疫になりますが、今になって花咲いた分野です。当時は黎明期であり、「がんを免疫で治すことは無理でしょう。」と言われていましたが、今は免疫療法に関してかなり注目されてきており、自分の中では「先見の明があったのかな」とも勝手に思っています。

ハード面でも診療面でも
誇ることができる体制

血液内科は、大きな施設であっても大学の附属病院であっても専門医の常勤医師が少なく、非常勤医師すら在籍していないところが多くあります。紹介していただくのに、明らかに白血病というのはもちろん大歓迎ですが、内容から血液疾患とは思えない紹介に関しても、なるべく垣根は低くし、門戸を広く開き丁寧に対応させていただいています。当院では、同種移植はできませんが、自家末梢血幹細胞移植を行っており、そちらは年々増えています(年10件程度)。施設として、血液内科専門病床も44床、その中に無菌床を12床抱えており、当院の様な中規模施設としては誇れる数だと思っています。
そして診療体制の面でいうと、私がここに赴任した時は1人でした。年数かけて、この体制に成長させることができています。血液内科は、専門医師の数でいうと絶対数が少ないため、診療体制を整えていくことが難しいといわれているなか、当院は5名の専門医と1人の専攻医、1名の慶應大学からの専攻医が在籍しでおり、手厚い診療体制をとることができています。

先駆けて行ったビターザ治療。
オピニオンリーダーとしての立ち位置で臨む診療

当院は、造血幹細胞移植拠点病院である都立駒込病院と連携しており、移植ができない主に高齢患者様を紹介していただいており、いわゆる棲み分けを行っています。主に移植非適応の骨髄異形成症候群患者に行われているビダーザ治療は250症例を超え、これは全国でも有数の誇れるレベルであるといえます。このビダーザ治療のノウハウについても症例の報告など講演する機会も数多くいただきました。

アクセスの良さから紹介は埼玉県からも 
充実した診療科で患者さんをサポート

当院のある台東区自体はさほど大きくはないため、近隣の足立区までが診療圏域になりますし、交通の便もいいため埼玉南部からも紹介があります。大学病院では溢れるくらい患者をかかえているということもあり、そちらからの紹介状をもって来院される方も多くいらっしゃいます。 血液内科に慣れていない先生方も多く、「もしかしたら血液疾患かもしれない」と思いつくことが難しいこともあります。今後も気軽に相談していただける窓口のひとつとしての受け皿にしていきたいと思っています。
血液疾患かもしれないと頭をよぎるのは主には検査値の異常になりますが、ワンポイントで判断することは難しいです。何より不安に思ったら、遠慮なく紹介していただきたいと思っています。以前あった症例の中で、若い方で多発性に骨折が起こり整形外科に数ケ月通っていた患者様で、「何かおかしい」と思いようやく採血をしてみたら骨髄腫であったという症例もありました。何か少しでも血液疾患かもと頭をよぎる症状が見受けらけられた時は頼ってほしいと思っています。
大きな病院の中で、ある一つの診療科がないというのは良く見受けられますが、全ての診療科が揃っているのは当院の強みであると思います。紹介いただいた結果として血液疾患ではなくても、ほかの科の先生とも協働し患者さんを診ているため、安心していただけるのではないかと思います。さらに臨床研修病院としても毎年7人の研修医の受け入れも行っており、都内では人気の病院になっています。何よりも他科の先生との連携も含めチーム体制が整っているのが強味だと思っています。

自覚症状が乏しい血液疾患だからこそ診断が難しい
専門分野における多くの経験から、今度は地域の先生との交流を交えた勉強会へ

血液内科の専門的治療は当院で行いますが、やはり一般的内科治療におきましては、地域の先生の役割が大きくなっていきます。両者で患者さんを支えていく体制をとっていくことを心がけています。血液疾患の早期発見は、自覚症状が乏しいぶん意外と難しく、やはり検診を定期的に受けていただくことが大切です。異常値があり、不安に思われれば、近隣の先生に診ていただき、そこから紹介していただく、そこは垣根を低くし、対応していきます。
「どのくらいの数値なら紹介をしよう」に関しては、教科書には載っていないことも多く、ここは経験でお伝えできる部分になると思います。今後は地域の先生との交流の中で、具体的症例を通して、検査値異常の見方など良い治療タイミングにつながる可能性についてもお伝えしたいと思っています。

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