

3月10日、当院にてオレンジカフェ「認知症の話」を開催しました。
当院脳神経内科・脳卒中科の勝又雅裕医師を講師に迎え、認知症の基礎知識から治療・予防・介護まで幅広い内容についてご講義いただきました。
医師ならではの専門的な視点から、日常生活の中で実践できる予防についても具体的に紹介され、参加者の皆さまは熱心に耳を傾けていらっしゃいました。
本記事では、当日の講義内容を振り返りながら、認知症への理解を深めるとともに、日常生活や地域での関わりに役立つポイントをご紹介します。
認知症とは、病気そのものではなく、記憶や思考、判断などの「認知機能が低下している状態」を指します。
原因となる疾患はさまざまで、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症のほか、甲状腺機能低下症や慢性硬膜下血腫などがあります。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症には現時点で根治治療はありません。一方で、ビタミンB1欠乏症や甲状腺機能低下症などでは原因への治療により改善が期待できます。また、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症などでは外科的治療が可能な場合もあります。
当院では初診時に問診や診察、検査を行い、ご家族からの情報も重要な手がかりとしています。
認知症の主な症状としては、単なる物忘れではなく、体験そのものが抜け落ちる記憶障害が挙げられます。
また、症状は短期記憶から長期記憶へと徐々に進行し、行動・心理症状(BPSD)を伴うこともあります。


認知症には、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型、前頭側頭型などがあり、それぞれ症状や進行の特徴が異なります。
診断は臨床所見をもとに、画像検査や血液検査、髄液検査などを組み合わせて行われます。
診断を行うことで、適切な治療や介護、支援につなげることができるという重要な意義があります。
認知症の方への関わりや支援制度について、基本的なポイントをご紹介します。
認知症の方への対応では、怒らない・否定しない・子ども扱いをしないことが大切です。
認知機能が低下してもプライドは保たれており、尊厳を大切にした関わりが求められます。
妄想や徘徊などの症状に対しては、否定せずに受け止め、安心できる対応を心がけることが重要です。
環境を整えたり、デイサービスの利用や運動習慣、GPSの活用なども有効とされています。
介護を一人で抱え込まず、早めに支援を活用することが重要です。地域包括支援センターや行政窓口への相談、訪問介護やデイサービスなどのサービス利用が、負担軽減につながります。(介護サービスを利用するには、要介護認定が必要です。申請から認定までには1~2か月程度かかります。
65歳未満の場合でも、介護保険や医療費助成などの制度を利用することができ、就労を続けながら活用できる支援もあります。
認知症は完全に防ぐことは難しいものの、発症リスクを下げることは可能とされています。
アルツハイマー型認知症のリスク因子には、加齢や遺伝といった変えられない要因がある一方で、生活習慣や生活習慣病など、予防可能な要因も含まれます。これらへの対策は、認知症予防に有効であることが示されています。
具体的には、血圧や血糖・脂質の管理、禁煙、適度な運動、バランスのよい食事に加え、口腔ケアや難聴対策、社会参加など、日常生活の見直しが重要とされています。
認知症の治療では、主に認知機能の低下を緩やかにする薬が使用されます。
内服薬(アリセプト、レミニール、メマリー)や貼付薬(アリドネパッチ、リバスタッチパッチ)があり、症状の進行を遅らせることが期待されます。
ただし、これらは根治薬ではなく、介護導入の時期を遅らせたり、BPSDの進行を緩やかにすることを目的としています。
副作用として易怒性などがみられる場合もあります。
近年承認された新しいアミロイド抗体治療薬で、保険適用となっています。アルツハイマー病の原因とされる物質に作用し、認知機能低下の進行を遅らせる効果が期待されています。
一方で、認知機能の低下そのものを止めることは難しく、現時点では根本的な治療には至っていません。
また、使用できる対象が限られているほか、脳出血や脳症などの副作用のリスクも報告されています。
さらに、定期的な点滴投与が必要であり、治療にかかる負担や費用面についても考慮が必要です。
現状では、アルツハイマー型認知症の根治にはなお時間を要するとされています。
今回の講義では、認知症について以下の点が重要なポイントとして示されました。
最後に行われた質疑応答では、積極的な質問が飛び交いました。
認知症は誰にとっても身近なテーマであり、正しい理解と早めの対応、そして周囲の支えが重要です。
今回のオレンジカフェが、認知症への理解を深め、地域で支え合うきっかけとなることを願っております。

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