第3回 公開講座 「毎日の食事で守る健康 生活習慣病予防とフレイル・サルコペニア予防」開催報告

第3回 公開講座 「毎日の食事で守る健康 生活習慣病予防とフレイル・サルコペニア予防」開催報告

3月7日(土)に、当院リハビリテーション科による公開講座「毎日の食事で守る健康 生活習慣病予防とフレイル・サルコペニア予防」が開催されました。
脳細胞や血管を傷つけるリスクが高い生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症など)は認知症発症の直接的原因となり得ます。
生活習慣病を予防するためには、毎日の食事がとても密接に関わっていきます。
予防の知識を深め、すぐにでもできる食事の工夫を学んで、明日からの日常に生かしていきましょう。

健康な体を維持するための食事の基本について

食事の基本は「バランスよく食べること」です。
バランスのよい食事の目安として、「一汁三菜」があります。
主食・主菜・副菜をそろえることで、自然と栄養バランスを整いやすくしてくれます。


栄養バランスガイド

1日に「何を」「どれだけ」食べたら良いのかを、料理の種類ごとにわかりやすく示したものが栄養バランスガイドです。
ガイドを参考にしながら主食・主菜・副菜を上手に組み合わせることで、食事の栄養バランスを整えることができます。


1日に「何を」「どれだけ」食べれば良いのでしょうか。食事バランスガイド

脂質と塩分を控えましょう

脂質の摂りすぎには注意が必要です。過剰に摂取すると動脈硬化をはじめとするさまざまな生活習慣病のリスクにつながります。
油を控えた調理方法を選ぶ、揚げ物の頻度を減らす、食べる回数や分量に気をつけるなどで無理なく摂取を控えましょう。

塩分を控えた食事も健康維持には重要です。1日の食塩摂取量の目標は、男性7.5g未満、女性6.5g未満とされています。
塩分の摂りすぎは高血圧の原因の一つとなるため、日頃から意識して減塩を心がけることが大切です。

日常生活の中で取り入れやすい減塩の工夫
  • 調味料は「かける」よりも「つける」
  • 漬物や汁物の量に注意する
  • 食べ過ぎないようにする


調理の工夫
  • だしのうま味を活用
  • 酸味や香味野菜、香辛料を加えて味にアクセントをつける
  • 汁物は具だくさんにすることで汁の量を減らす
  • 塩分を多く含む加工食品の摂りすぎにも注意

生活習慣病予防のための食事療法

糖尿病 食物繊維を多く含む食材を摂る ゆっくりとよく噛んで食べる 糖質の多いジュースや菓子パンを控えめにする 一日あたりの適正なカロリーを守る(男性2000〜2200kcal、女性1600〜1800kcal)

サルコペニア、フレイルについて

加齢に伴って筋肉量や筋力、身体機能が低下する状態をサルコペニアといいます。
筋力の低下により転倒しやすくなったり、歩行が困難になったりするなど、日常生活に影響が出ることがあります。

一方フレイルとは、サルコペニアによる身体機能の低下に加え、認知機能の低下や社会活動の減少などが重なり、心身の活力が低下した状態をいいます。
どちらも早期に気づき、適切な食事や運動を取り入れることで、改善や予防が期待できるとされています。

低栄養とフレイル・サイクル

フレイルの大きな原因の一つとなる「低栄養」とは、エネルギーやたんぱく質が不足し、健康な体を維持するために必要な栄養素が十分に摂取できていない状態をいいます。

サルコペニアが進行すると筋肉量が減少し、基礎代謝が低下します。するとエネルギー消費量も減少し、それに伴って食欲の低下につながることがあります。このような状態を繰り返すことを「フレイル・サイクル」と呼ばれています。

重要な栄養素

フレイルやサルコペニアの予防には、たんぱく質の摂取が重要です。
たんぱく質は筋肉や体の組織をつくる大切な栄養素であり、不足すると筋肉量の低下につながる可能性があります。

高齢者の場合、1日に必要なたんぱく質の量は「体重×1.2g」が目安とされています。
例)体重50kgの方であれば約60gのたんぱく質が必要

肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などをバランスよく取り入れ、毎日の食事から十分なたんぱく質をとることが大切です。

主な食品中のたんぱく質量の目安皮なし若鶏むね肉 (170g) …39.6g 木綿豆腐 (300g) …21.0g 鮭 (1切 80g) …17.8g 生しらす (100g) …15g ひきわり納豆 (1パック50g) …8.3g たまご (1個50g) …6.2g

また、筋肉や骨の維持に欠かせない栄養素で、たんぱく質の働きを助ける役割もあるビタミンDも、フレイルやサルコペニアの予防に重要な栄養素です。
不足すると筋力や骨密度の低下を引き起こし、転倒や骨折のリスクが高まるとともに、フレイルのリスクを高める可能性があります。
そのため、日頃の食事で意識してとることが大切です。

ビタミンDのとり方

食事のポイント

  • 1日3食を心がける:必要なエネルギーやタンパク質を意識する
  • 孤食よりも共食を:家族や友人と一緒にコミュニケーションを取りながら食事する
  • バランスよく食べる:肉、魚、乳製品、大豆製品など、たんぱく質を多く含む食品をおかずに1品入れる
  • おやつも上手に活用する:プリンやチョコレート、ナッツ類など、たんぱく質を一緒に補給できる食品を上手に活用する

嚥下(えんげ)体操

講義の後半では、言語聴覚士による嚥下(えんげ)体操について学びました。

飲み込みについて

私たちが何気なく行っている「飲み込み」は、実はとても繊細な動きをしていて、食べ物を飲み込む時間は、わずか0.5秒という速さで行われています。

飲み込みの一連の流れを「嚥下5期モデル」と呼びます。

  1. 先行期(認識):目や鼻で食べ物を認識する
  2. 準備期(咀嚼):噛み砕き、唾液と混ぜる
  3. 口腔期(送り込み):舌を使ってのどへ送る
  4. 咽頭期(ごっくん):「嚥下反射」で飲み込む
  5. 食道期(通過):食道から胃へ


どの段階がつまずいても、スムーズに飲み込むことが難しくなります。

この飲み込む力を支えているのは「筋肉」です。足腰と同じようにのどにも筋肉があり、年齢とともに衰えていきます。
筋肉が低下すると、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなり「誤嚥(ごえん)」の原因になります。

気管に食べ物が入るとむせることがありますが、むせは誤嚥そのものではありません。
むせは、気管に入った物を外に出そうとする防衛反応です。咳の力によって気管から食べ物を出すことで、誤嚥を防いでいるのです。

しかし、筋肉が衰えてむせる力が弱くなると、気管に入った物をうまく排出できず、誤嚥性肺炎のリスクが高まってしまいます。

毎日の食事中や食後の様子を思い出し、飲み込む力についてセルフチェックを行ってみましょう。

食事の際に、きちんと「姿勢」を整えましょう。

  • 背筋を伸ばして、あごを引く
  • 足の裏は、床にペッタリつける(足は組まないようにする)


正しい姿勢を意識するだけでのどに自然と力が入り飲み込みやすくなります。
ちょっとした工夫が誤嚥の予防につながります。

まとめ

今回の講義では、「食事で健康を維持する方法」と「飲み込む力」という、日々の食事に関わる大切なテーマについて学びました。
多くの方にご参加いただき、「食べること」への関心の高さが伺えました。
食べることは、健康を支えるだけでなく、生活の楽しみのひとつでもあります。
これからも「おいしく・安全に」食事を続けていくために、今回の学びが生活の中で少しでもお役に立てば幸いです。