産婦人科 部長  小田 英之医師

産婦人科 部長  小田 英之医師



医師を目指したきっかけはブラックジャック
身内を“がん”で亡くした経験から産婦人科の道へ

私が医師を目指したきっかけは、よくある話だと思うのですが、小学校の時に読んだブラックジャックです。
命を救う職業に大きな憧れを抱きました。しかし「医師になりたい」という気持ちをずっと持ち続けていたのではなく、「本当に医師としてやっていけるのだろうか」と不安を抱き、当時同じように興味があった物理学者という道を検討した時期もありましたが、研究ができるといった点においては、医学であっても続けられると感じ、やはり命を救うという職業を目指したいと思い、医師になることを決意しました。

産婦人科を専門分野に選んだ理由は、私自身がお世話になっていた従兄が30代という若さで、肺癌で亡くなったことが大きく影響しています。この時に「“がん”に関わる医療がしたい」と感じ、大学の自主学習として“がん”の研究室に顔を出すようになり研究に携わるようになりました。“がん”で亡くなる原因の多くが転移に関わっていますので、転移を制御する研究を行いたいと考えるようになりました。浸潤転移を大きく影響しているものは、白血球、血管、胎盤などがありますので、血液内科、産婦人科といった分野に興味を持ち、最終的に固形がんを扱っている産婦人科を選択しました。

がん治療から興味を持ち進んだ産婦人科でしたが、がん治療は、治療を行ってもそれで完治したのかすぐに分からず、患者さんに「治って良かったですね」と言えるのは一般的には5年ほどかかってしまいます。それでも、ごく稀に再発する方もいます。しかし、産科においては赤ちゃんが誕生した瞬間に「よかったですね」と言えることが多く、がん治療だけでなく産科にも大きなやりがいを感じるようになりました。現在は出産だけではなく不妊症治療も専門的に行っています。

「最初からあきらめない」腹腔鏡手術
常に患者さんにとってのベストな選択を追求する

当院では良性腫瘍に対してほぼ100%で腹腔鏡手術を実施できています。
腫瘍の大きさによっては、開腹手術を選択するという施設も多いと思いますが、患者さんの希望を確認し、安全に手術ができる症例であると判断できた時は、可能な限り腹腔鏡手術を選択するようにしています。当院が高い割合で腹腔鏡手術を実施できている理由は、慶應義塾大学病院の医師たちによる教育と技術指導のバックアップによるものが大きいです。バックアップにより腹腔鏡手術を数多く経験したことにより、技術が向上したことはもちろんですが、当院の適応範囲を正しく判断できるようにもなりました。

腹腔鏡手術に関しては、開腹手術よりも手術時間が長くなることもしばしばありますので、時間的な面から患者さんの負担が大きくなるのではないか?というご意見もありますが、患者さんが女性であることを考えると、やはり傷口は小さい方が喜ばれる患者さんが多いことを日々の診療で実感しています。
腹腔鏡手術に向かない症例の場合は、当院でも開腹手術にコンバートしていますし、子宮内膜症が悪化し腸管切除をせざるを得ないような症例などで対応困難と判断した場合は、速やかに慶應義塾大学病院などの高次機能病院の関連病院を紹介できる体制も整えていますので安心してご相談ください。

内科的な知見を活かした
正確な診断を心掛ける

婦人科においては、内科的な鑑別診断も大変重要となります。 私自身が基礎研究に関わった経験がありますので、内科的な知見も含めて論理的に考えることが得意です。内科的疾患を鑑別に入れながら内科医に必要に応じて相談し、長年の臨床経験から得た多角的な視点を組み合わせて、診断の精度を上げることができるようになりました。今まで経験したことが日々の診療に役立っていることを大変実感しています。
例えば、どうしても診断がつかず一度内科にご紹介となった患者さんがいらっしゃいましたが、内科でも診断がつかず紹介元の婦人科に戻った後に、当科へご紹介があり診察させていただいたところ、すぐに診断ができたというような事例もあります。これは、婦人科と内科の両面から多角的に診断ができた良い事例だと思います。
婦人科で診断がつけないなど症状でお悩みの場合も、当院にお気軽にご相談頂ければお役に立てることがあるのではないかと感じています。

大切にしていることはわかりやく丁寧な診療、
そして自分の家族に薦めることができる医療の提供

診察をするうえでどうしても話す言葉が難しくなりがちなため、できる限り噛み砕いた説明をすることを心がけています。そして医者が行っている医療が、自分の家族が同じように相談してきたときに薦めることができるかということを常に考え日々の診療にあたっています。私自身もできる限り寄り添うことを心がけていますが、更年期障害など女性スタッフの方が患者さんも話しやすいといった場合は、専門の女性医師に依頼するなど、自分にできることと、できないことを明確にするようにしています。すべて自分で解決しようと思うことが、必ずしも患者さんにとって良い医療ではない場合も多くあるからです。

体制を強化し続け、
地域の産婦人科医療に貢献したい

産婦人科に関しては、断らない医療体制をとるように心掛けています。 しかしながら、当院にはNICUがないため、奇形の赤ちゃんの妊娠や、週数が分からない妊婦さんはお断りせざる得ないことがあります。また、精神疾患を抱えいくつも向精神薬を内服しており、薬の影響を受けて赤ちゃんの集中管理が予測されるような症例などにおいても、小児科対応のレベルによってはお断りせざるを得ない状況の場合もあります。
しかしながら、今後の展望としまして、病院の理念である地域の中核病院として台東区の医療提供は基本としながらも、台東区以外での患者ニーズに対して医師の充足率が足りていない地域では産婦人科医療が手薄であったり、腹腔鏡手術が行われていない地域があり、そちらにも目を向けていきたいと思っています。そして、産科の診療体制の充実を図りたいと思っており、最終的には周産期部門と婦人科部門を分けた体制を整え、実績をあげた上で新生児科も作り上げていきたいと思っています。現在当院は妊婦さんを36週2000gという基準で受け入れていますが、総合病院として34週の産婦さんも受け入れることができるように体制を整えていきたいと思っています。

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