台東区看護部長会 教育担当者主催研修「ACPについて」


10月29日(水)に、台東区看護部長会教育担当者主催研修が開催されました。
今回のテーマは、患者さんの意思決定支援において重要性が増している 「アドバンスケアプランニング(ACP)」 です。
当院の緩和ケア認定看護師が講師として登壇し、ACPの具体的な進め方や倫理的な側面について講演いたしました。想定していたよりも多くのスタッフが参加していた事から、ACPに対する関心が深まってきていることが伺えました。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは、自分が将来、病気や怪我などで自分の意思決定が難しくなった場合に、どのような医療やケアを受けたいかをあらかじめ考え、家族や信頼できる人、医療・介護の専門家と繰り返し話し合い、共有するプロセスです。
「人生会議」とも言われており、「大切なこと」「してほしこと」「してほしくないこと」を具体的に共有し、自分の意思に沿った最善の医療やケアを受けることを目的とします。

ACPが普及した背景として、少子高齢化が進み、病気が長期化・慢性化する中で、
といった問題が多くなりました。
2024年度、診療報酬改定において、入院医療や在宅医療を行う医療機関に対しACPの取り組みが義務化されたことにより、看護の現場においての重要性が一気に高まりました。
ACPを進めるうえで大切なのは、患者さんにとって「何が最善か」を常に考え、自分の意思で選び、決定できるように支えていくことです。

ACPは「人生の最終段階の話し合い」に限られたものではありません。
人が生まれてから最期を迎えるまで、サポートが途切れず、みんなで継続して関わっていく体制が必要です。
また、差し迫った場面だけで行うものではなく、「診察時」「治療開始時」「治療変更時」など、日々の看護の中にもACPの要素が散りばめられています。
その一つひとつの場面に気づき、患者さんや家族に寄り添ったアプローチを重ねていくことが、看護師に求められる役割だと学びました。
病気になると、治療方針や今後の過ごし方など、深刻な意思決定を迫られることが多くあります。だからこそ、元気な時に「もしもの時、どう生きたいか」を考えておくことが大切です。自分の気持ちを家族や医療者に伝えておくことで、家族の安心につながり、自分らしい人生を送ることができます。
ACPは「医療の話し合い」ではなく「自分の生き方を大切にするための対話」なのだと学ぶことができました。
かつての日本では、患者さん本人の意思よりも家族の意向が優先されることが多く、患者さんが自分の病気や余命を知らずに最期を迎えるケースも少なくありませんでした。
しかし、ACPという概念が広まったことで、患者さん一人ひとりの尊厳や意思を尊重していこうという動きが強まっています。
ACPを行うことで、患者さんだけでなく家族にとっても安心感が生まれ、看護の現場でも迷いなく対応できるようになります。そのため、ACPは今後ますます積極的に取り組むべきものと言えるでしょう。
人生の最終段階になってから話し合うのではなく、意識がしっかりしている段階から少しずつ話し合いを始めていくのが大切です。とはいえ、現場ではACPの話題を切り出すタイミングが難しいと感じる声も聞きます。
そこで、東京都が発行している、事例を用いてわかりやすく説明している冊子が配られ、とても参考になったのでご紹介します。
下記リンクよりダウンロードできます。
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/zaitakuryouyou/acp_booklet
講義の後半では、在宅・緩和ケア医師が開発したカードゲーム「もしバナゲーム」を使い、グループに分かれてさまざまな場面を想定したシミュレーションを行いました。
プレイヤーを余命半年と仮定します。「人生の最後にどう在りたいか」、「もしもの時にどうしたいか」を大切な人と話し合うきっかけとなるカードゲームです。ゲームを通じて、自分自身や人生の価値観への気づきを得ることができます。
参加者からは、「一人ひとり、こんなにも大切にしていることや考え方が違うのかと実感した」という声が多く聞かれ、ACPの根底にある“個人の価値観の多様さ”を改めて感じる機会となりました。また、看護師としての知識を持つ自分たちとは異なり、一般の方が感じるであろう不安や迷いに気づけたという意見もありました。
一方で、「病気を克服しようと頑張っている患者さんに対して、ACPの話題を切り出すのは難しい」という声もあり、ACPを実践するうえでのタイミングや言葉かけの難しさを感じる場面も共有されました。
このグループワークを通して、参加者それぞれが「価値観の違いを尊重すること」「患者さんや家族の思いに寄り添うこと」の重要性を改めて感じる時間となりました。
実際の経験からお話してくれた参加者の方もたくさんいて、ACPは誰にとっても身近で大切なテーマだと改めて感じました。
「人生の最終段階」をどのように迎えるか、その準備について話し合った2時間は、普段は話題にしにくいことを深く考えるとても貴重な機会となりました。
今回参加できなかった方にも、このレポートがACPを考え始めるきっかけになればうれしいです。